大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)2064号 判決

訴外篠塚実が訴外千葉みずしま株式会社から昭和二十五年十一月十日本件貨物自動車を代金九十三万円で買受ける旨契約したことは当事者間に争がなく、証人篠塚実及び被控訴人本人の原審並びに当審における各供述、右証人篠塚の当審における証言によりその成立を認め得る甲第十一号証の記載によると、被控訴人は昭和二十六年五月二十五日訴外篠塚実から本件貨物自動車の贈与を受け、その頃その引渡を受けたことを認めることができる。

控訴人は、訴外篠塚と訴外千葉みずしま株式会社間の本件貨物自動車の売買契約は、代金完済のときその所有権を移転する約旨であつたから、訴外篠塚が右自動車を被控訴人に贈与した当時は、未だ訴外篠塚は代金を完済していなかつたので、その所有権を取得しておらず、従つて右贈与は第三者の所有物を目的とするものであるから、無効であると主張し、成立に争のない乙第十号証の記載、原審証人池田仁郎、原審並びに当審証人土橋知雄の各証言を綜合すると、訴外千葉みずしま株式会社と訴外篠塚との本件貨物自動車の売買契約は割賦代金を完済したときに所有権が訴外篠塚に移転する旨の特約附であつたが、被控訴人が訴外篠塚から本件貨物自動車の贈与を受けた当時は、右自動車代金の内金三十万円が未払になつていたため、訴外篠塚は未だその所有権を取得していなかつたことが認められるが、贈与は贈与者の財産を無償で相手方に与うることを約するもので、その財産は現在既に贈与者の権利に属するものなると将来贈与者において取得すべきものなるとは固より問うところではないから、他人の財産であつても贈与者が他日これを取得し自己の財産となつたときはこれを相手方に供与すべきことを契約するのは固より妨げないのであつて、これらの条件を附することなく直ちに物権的に第三者所有の財産を供与すべきことを契約することが法の認容しないところであるにすぎない。従つて贈与者のなした契約がそのいずれに当るかは各場合につき当事者の意思を探究してこれを決すべきであつて、控訴人の主張するが如く他人の財産を目的とする贈与を一様に無効と論じ去ることはできない。そこで本件についてこれをみるに、原審並びに当審における証人篠塚実及び被控訴人本人の各尋問の結果によると、訴外篠塚と被控訴人間においては反証のなきかぎり、当時本件自動車の所有権が訴外篠塚になきかぎり上述の如き無効の契約をなす趣旨ではなく、後日代金の完済により本件貨物自動車の所有権が篠塚に移転すると同時に被控訴人に移転する趣旨の下に贈与契約がなされたものと認めるを相当とする。しからば訴外篠塚と被控訴人間の本件贈与契約は有効と解すべきであるから、該契約を無効となす控訴人の主張は理由がない。

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